自己破産で帳消しになる借金、ならない借金

借金でどうしようもなくなったとき、裁判所に自己破産の申し立てをして認められれば、借金が帳消しになって新たなスタートを切ることができる。ただ、借金の原因によっては、自己破産が認められても債務の免責、つまり借金の帳消しが認められないケースがあるのはご存じだろうか。

「免責不許可」となる主なケース
破産法には、債務の免責が不許可になるときの事由が定められている(表参照)。たとえば借金の原因が「浪費又は賭博その他の射幸行為」だった場合は、債務の免責が不許可になる。つまり銀座での豪遊やパチンコが原因でつくった借金は、自己破産しても棒引きにしてもらえない。

問題は、何が浪費や射幸行為なのかということだろう。高級クラブでの豪遊やギャンブルならわかりやすいが、ちょっとした外食や宝くじならどうだろうか。荘司雅彦弁護士は次のように解説する。

「どこから浪費や射幸行為に当たるのかという明確な線引きはありません。たまに居酒屋に行く程度なら一般常識に照らし合わせて浪費とはいえないでしょう。宝くじは射幸性がありますが、もともと1セット3000円を買ったくらいでは借金の主な原因にはなりません。これらのことが事由で免責が認められないということは考えにくい」

では、株式の信用取引先物、FXなどはどうだろうか。これらの金融商品はハイリスクハイリターンで、一瞬で財産を失う人も多い。

「グレーゾーンですね。代理人の弁護士としてなら投資行為と主張するでしょう。ただ、消費者金融で借金をしてFXに注ぎ込んでいるようなケースだと、免責不許可事由に当たると判断されるおそれがあります」

仮にパチンコでつくった借金だったとしても、肩を落とすのは早い。借金の原因が免責不許可事由に該当したとしても、破産に至る経緯などを考慮して裁判所の裁量で債務の免責が認められることがある(破産法252条第2項)。

「考慮される要素はいくつかありますが、なかでも重要なのは、再起しようという本人の意欲。パチンコをやめるつもりがなく、引き続きパチンコ店に通っていたりすると、裁判官はもっと苦労させたほうがいいと判断して、免責を許可しないかもしれません」

もっとも、免責申し立てをして裁判所の裁量でも不許可になるのは、「東京地裁で1%もない」(荘司弁護士)。運用上、免責の申し立てをすればほぼ認められると考えていい。

「破産者がパチンコをしていても、弁護士はそのことを破産の原因にあげません。ウソはつけませんが、『生活費で借金をつくった』と解釈して申し立てを行うはずです。裁判所も、ヘタに不許可にして高裁に即時抗告されることは望んでいません。まさに魚心あれば水心あり。破産者がギャンブルで借金をつくったと薄々気づいていても、見逃してくれることが多いのです」