LINE 関東財務局が立ち入り検査

ゲームの「鍵」、通貨の疑い

 無料通信アプリ大手「LINE(ライン)」(東京都渋谷区)が運営するスマートフォン用ゲームで使う一部のアイテム(道具)が資金決済法で規制されるゲーム上の「通貨」に当たると社内で指摘があったのに、同社は仕様を変更し規制対象と見なされないよう内部処理していたことが分かった。同法を所管する関東財務局は必要な届け出をせず法令に抵触する疑いがあるとして、同社に立ち入り検査するとともに役員らから事情聴取し、金融庁と対応を協議している。

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供託金数十億円必要か

 検査対象は、2012年に公開され14年にダウンロードが4000万件を超えたヒット作として知られる同社のパズルゲーム「LINE POP(ラインポップ)」など。

 資金決済法では、あらかじめ代金を支払い、商品やサービスの決済に使うものを「前払式支払手段」と規定。商品券やプリペイドカードのほか、オンラインゲームで「通貨」として使われるアイテムなども該当する。発行会社の破産で商品券やアイテムが使えなくなるなど万一の際に備え、未使用残高が1000万円を超える場合は半額を「発行保証金」として法務局などに供託し、利用者保護を図る義務がある。

 複数の関係者によると、昨年5月、ゲーム内のアイテム「宝箱の鍵」が前払式支払手段に当たる可能性があると内部で指摘された。「宝箱を開ける」用途以外に、使用数に応じてゲームを先に進めたり、使えるキャラクターを増やしたりできる仕様だった。鍵1本当たり約110円相当で、当時の未使用残高は約230億円。長期間使っていない利用者分を除いても数十億円の供託を求められる可能性があったという。

 同社の担当者が昨年5月に社員らに送ったメールには「未使用残高が約230億円という莫大(ばくだい)な額で、とても供託できる額ではありません」「1年近く前から通貨に該当する状況であったのに、届け出ずにいたことになりますので、処分を受けるリスクもあります」などと記載していた。

 アイテムが「通貨」であれば資金決済法に基づき財務局への届け出が必要だが、その後、同社はアイテムの用途を制限するなど仕様を変えることで「通貨に該当しないという説明が可能」と判断。7月に仕様を変更し、財務局には届け出なかった。7月24日付で役員に提出された内部の報告書には「仕様変更をもって通貨に該当しないという立場を取る」と記載。同社の関係者は「多額の供託金を逃れるため、仕様変更で疑惑を覆い隠した」と証言する。

 関東財務局は今年1月、同法に基づく検査を開始。金融庁ガイドラインなどで定められた社内の管理体制などが不十分だった疑いもあるとみて、他のゲームも含めて資料を提出させ分析を進めている。

 LINEの担当者は取材に対し「検査を受けていることは事実。昨年5月にアイテムが前払式支払手段(通貨)に該当するのではないかという相談が社内であったが、問題ないと判断した。それをより明確にするために仕様変更し、それ以降は厳格な運用をしている」と説明した。【藤田剛】

◇資金決済法◇

 ITの進展による新たな決済サービスを規制するため2010年に施行。旧来の法では商品券やICカードなどが対象だったが、電子マネーなどの普及に伴い法整備された。発行会社は年2回、発行額や未使用残高を財務局に報告する義務がある。報告を怠ったり無登録で発行したりした場合には罰則があり、財務局が業務改善を命じる場合もある。